体感型MMORPGフィルトウィズオンライン。
冒険、戦闘などのおなじみの要素から、調理、制作など職人的な要素まで、更には恋愛だって存在する何でもありの世界。
フィルトウィズのＮＰＣには高度な「対話成長型ＡＩ」が搭載されており、本当の人間と何も変わらないのではと思える程です。
この世界の冒険者、ワンダラーとなって冒険しよう。
そんな触れ込みから凄まじい人気を博したオンラインゲームだが、突然サービスを終了してしまう。稼働したサーバーを残して……。

しかし、人間と変わらないAIを搭載するNPC達はそんな事もしるよしもなく、
そもそも「自分たちがゲームの中の登場人物」、「この世界がデジタルな世界」とすら思っていない。

……

かつて雪の街スノーホワイトに居を構える貴族であったが、
今や魔将の手に落ち、シュセンへと逃れた没落貴族の娘。それがロゼである。

工芸品を取り扱い栄えた家系では有るが、今となっては工芸品にそこまでの価値はなく、
魔族や魔物と戦う力を持つ家系ほど信頼される世の中である。
ロゼはそんな家柄では有るが、両親と比べるとややおてんばであり、
人の信頼を勝ち取るには人の助けになることを自分からすれば良いのでは？
と安直ながらも的を射た考え方をする少女である。

その考えから、探索者エクスプローラーとなり、探索や依頼をこなす日々を過ごしている。
貴族の娘では有るが、自分のお金は自分で稼ぎたい派の活動的なお嬢様。

しかし、ロゼには深刻な「問題(バグ)」を抱えていた。
この世に生成されたときから、「右腕と左脚が無かった」のである。
世間からの目を恐れた両親は、ロゼを愛して育てたものの決して外には出さず、
その反動が今のロゼにあらわれているとも言える。

現在でも身なり自体はまだ幼く、大人にはあと一歩及ばないかなといった雰囲気だが、
とても高そうなドレスを着ているためエクスプローラーには見えず、
ギルドに依頼を出しに来た貴族にも見えるが、そう判断するのは素人である。
ドレスのスリットからギラギラと見える脚と、
一際重そうな足音を聞いていれば、彼女がただの貴族で無いことはよく分かるはず。

左足には高精度な義足を付けており、戦闘にも絶えうる特注品。
よってシステム上では足を欠損とは扱われておらずデメリットは発生していない。
そしてロゼ自身、先祖返りで両親とは違い「デモニカ」という種族として目覚めており、
風属性を操ることを得意としている。
特に、本来付いていたであろう「脚と腕」に風の能力を集中させやすいらしく、
レジェンド級の義足から繰り出される属性攻撃はノーガードで受けると、受けた側は色々だめになってしまう破壊力を秘めている。

義足を使いこなすロゼだが、義手は一切使用していない。
というのも、指がない、という理由から細かい動作ができず、あっても変わらないから、という理由である。
腕を機械化させることも考えたらしいが、これ以上お金をかけたくないのと、
脚でやればいいじゃない、という考えから、腕に義手をつけないでいるようだ。
ちなみに腕はあると便利かもしれないが、無くても特に不便はしていない模様。
プラスではないがマイナスではないのでどうでもいいということらしい。

しかし何の因果か、今彼女はオラクルに居る。
しかも「問題(バグ)」が修正されて、である。腕と足があるというあまりにも衝撃的事実に、
此処がどこであるかという問題は二の次らしい。
先祖返りで発現したデモニカの能力も問題なく発揮できるようで、現在はアークスとして活動中。

というほどうまい話ではなく……
生まれつき腕がない彼女は、右手がうまく扱えず、左手と一緒ににぎにぎしてしまったり、
中指だけを動かす、などの細かい挙動ができず、
義足だった脚も、思いっきり蹴れば反動で脚がめっちゃ痛い為、

別に腕と足はなくても良かったかな……(遠い目)

とか思っているとかなんとか。

戦闘スタイルは風をまとわせたキックが主体で、
アークスの基準で言えばジェットブーツが非常に近いが、
思いっきりキックできない問題を抱えているので、
今後、今の肉体に合わせた脚に装備する武装を考え直す必要があるだろう。